Microsoft Entra ID のカスタム禁止パスワード機能を試してみた
Microsoft Entra ID (旧 Azure Active Directory) のパスワード保護機能には、指定した用語をパスワードに含めることを禁止する「カスタム禁止パスワード」機能があります。会社名や製品名などを禁止リストとして登録する利用例があり、パスワードスプレー攻撃からの保護に役立ちます。以前から機能があることは知っていましたが、使ったことがなかったため試してみました。
カスタム禁止パスワードについては次のドキュメントに記載があります。
Microsoft Entra ID でのパスワード保護 | Microsoft Learn
なお、カスタム禁止パスワードを利用するためには MICROSOFT ENTRA ID P1 ライセンスが必要です。
カスタスの禁止パスワードを試してみる
カスタム禁止パスワードとして「classmethod」を設定して試してみます。
設定方法はチュートリアルページに掲載されています。
カスタム Microsoft Entra パスワード保護リストを構成する | Microsoft Learn
カスタム禁止パスワードの設定
Azure Portal の Entra ID からも設定できますが、今回はチュートリアル同様に Microsoft Entra 管理センター から設定してみます。
「classmethod」をカスタム禁止パスワードとして設定して保存します。
以上で設定は終わりです。
ドキュメントにも記載がありますが、設定反映まで数時間かかる場合があります。
カスタム禁止パスワード リストの更新が適用されるまでに数時間かかることがあります。
(引用元)カスタム Microsoft Entra パスワード保護リストを構成する | Microsoft Learn
「classmethod」のみが禁止リストに含まれる状態で、いくつかのパスワードを設定できるか試してみた結果です。単純な文字列一致だけではないロジックであることが分かります。
No. | 設定パスワード | 設定可否 | 理由 |
---|---|---|---|
1 | ClassmethodA1! | 不可 | 正規化により大文字は小文字に変換されて評価されるため |
2 | cl@ssmeth0dA1! | 不可 | 正規化により記号/数字がアルファベットに置換されて評価されるため |
3 | classmethodA1! | 不可 | スコアが 5 未満のため |
4 | classmethodA1!B2? | 可能 | 禁止文字列が含まれるが、スコアが 5 以上のため |
5 | classA1!method | 可能 | (おそらく)禁止文字列が分断されているため |
設定不可の理由は、次のドキュメントに記載されている評価方法を読めば分かります。本ドキュメントを読めば十分理解できるのですが、勉強も兼ねて以降に設定可否の結果の補足を記載します。
Microsoft Entra ID でのパスワード保護 | Microsoft Learn
正規化により設定できないパターン
No. 1,2 が設定不可の理由は正規化のためです。
「① 大文字は小文字に変換」され、さらに「② 下表の置換」が実施された後にカスタム禁止パスワードが評価されます。
元の文字 | 置換される文字 |
---|---|
0 | o |
1 | l |
$ | s |
@ | a |
上記のため、No. 1 は ① により小文字に変換され、No. 2 の@
0
はa
o
に置換された結果、両方とも「classmethodA1!」として評価され、カスタム禁止パスワードが含まれると判断されたと理解しました。
スコア計算により設定できないパターン
No. 3, 4 はスコアの計算が関係しているようです。
スコアは次のように計算されます。
- ユーザーのパスワードに含まれる各禁止パスワードには、1 ポイントが与えられます。
- 禁止パスワードに含まれない残りの各文字には、1 ポイントが与えられます。
- パスワードが受け入れられるには、少なくとも 5 ポイント必要です。
(引用元)Microsoft Entra ID でのパスワード保護 | Microsoft Learn
今回の場合は No.3 は下表の評価となり、合計 4 ポイントとなり、5 ポイント未満のため設定不可になると理解しました。
文字列 | スコア |
---|---|
classmethod | 1 |
A | 1 |
1 | 1 |
! | 1 |
No. 4 は下表の評価となり、合計 7 ポイントとなり、5 ポイント以上のため設定可能となります。
文字列 | スコア |
---|---|
classmethod | 1 |
A | 1 |
1 | 1 |
! | 1 |
B | 1 |
2 | 1 |
? | 1 |
カスタム禁止パスワードによりパスワード変更できない場合の画面
最後に参考情報ですが、No. 1〜3 においてパスワードが設定できなかったときは次のようなメッセージが表示されました。
上図のエラーメッセージも含めて、次のパターンのメッセージが表示される場合があるようです。
"残念ながら、パスワードを簡単に推測できる単語、語句、またはパターンが含まれています。 別のパスワードで再実行してください。"
"同じパスワードがこれまでに何度も使われています。 より推測されにくいパスワードをお選びください。"
"第三者によって推測されにくいパスワードを選択してください。"
(引用元)Microsoft Entra ID でのパスワード保護 | Microsoft Learn
また、No. 5 のパスワード文字列classA1!method
に関して、禁止リストを「class」「method」に分けて再度試したところ、「他の人に推測されにくいパスワードを選択してください。」とのエラーメッセージで設定できませんでした。スコアの計算は 5 となる認識ですが、上述していない あいまい一致の動作 により設定できなかったものと思われます。
以上で、カスタム禁止パスワードのお試しは終わりです。
さいごに
Microsoft Entra ID のパスワード保護機能の一つであるカスタム禁止パスワードを試してみました。パスワードスプレー攻撃からの保護のために設定を検討すると良いと思いました。
以上、このブログがどなたかのご参考になれば幸いです。